古くから伝わる日本の伝統芸能について

日本の代表的な伝統芸能としては、歌舞伎、能、文楽の3つが挙げられます。いずれも15〜16世紀に始まり、主に宮廷で上演されていました。歌舞伎は、能とは対照的に、狂言や殺陣を含む非常にダイナミックなストーリー展開で観客を驚かせることを目的としています。一方、能は、伝統的な文学を題目にしたものが多く、主人公は超自然的な存在や生身の人間を演じ、物語を語りかけていきます。高度に様式化された舞(能の踊り)は、仮面や衣装、スキルの高いパフォーマーを必要とします。そして、3つ目に挙げた文楽は、日本の伝統的な人形劇です。人形遣いが、高さ1.5メートルにもおよぶ大型の人形をうまく操ります。文楽では、音楽が重要な役割を果たすとされています。以下にて、それぞれの芸能についてもっと詳しく見ていきましょう。

歌舞伎

歌舞伎は、日本の演劇の中で最もよく知られている芸能であり、その起源は江戸時代の17世紀にまでさかのぼります。すべて男性と決まっている役者は、ダイナミックな衣装や仮面、大げさな演技などを用いて、観客に畏怖の念を抱かせますが、これこそが歌舞伎の醍醐味となっています。

能は、音楽、舞踏、演劇を組み合わせた複雑な芸術として14世紀に誕生しました。歌舞伎と同じく5幕構成となっていますが、狂言を挟みながら、一日中演じられます。能を観劇する際に覚えておきたい心得は、礼儀作法を知ること、です。能の上演前にプログラムブックを購入し、物語や背景をきちんと把握しておくとよいでしょう。

ちなみに能では、謡と囃子が退場するのを待ってから拍手をします。もし不安になった場合は、他の人の拍手を待ってから自分もするようにしましょう。

文楽

文楽は、17世紀後半に大阪で誕生した人形劇であり、現在では、洗練された完成度の高い芸術とされています。3名の人形遣いが大きな人形を操り、1名の演者が物語を語ります。物語と人形遣いの複雑な動きは、音楽とともに進行して行きます。

文楽を含め、古くから伝わる日本の芸能は、ただ単なる伝統的なエンターテイメントではありません。日本の宮廷の暮らしは文化的に豊かであったため、さまざまな舞踊、音楽、パフォーマンスがあり、それらは互いに影響し合いながら、西洋文化にも大きな影響を与えているのです。

京舞

冒頭では挙げませんでしたが、京舞についても紹介していきます。17世紀の京都で発達した京舞は、洗練された宮廷の影響を受けた柔らかで美しい動きが特徴の日本舞踊です。踊り手は舞妓さんと芸妓さんで、彼女らは緻密で優雅な衣装を身にまといます。

京舞では、舞と音楽が密接に関係しあっていますが、その中でも日本の国楽「箏」が重要な役を担っています。最も有名な伝統楽器のひとつである箏は、長さ約180cm、13本の弦で構成されています。この弦を弾くのに使う指は3本だけです。どんなにポップミュージックが流行ったとしても、箏は広く尊敬され、長く愛され続けている楽器なのです。

また箏は、仏壇や寺院、宮廷などにて、日本の古代音楽の一種を演奏する雅楽オーケストラが使用する楽器でもあります。京舞では、精緻で深みのある楽曲が、管楽器、弦楽器、打楽器などを用いて演奏されます。一方、京舞としばしば融合される芸能として、狂言があります。同じく京都の地で伝承されている狂言は、対話を中心とする喜劇の一種であり、能の幕間に演奏されることも多いです。